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イソワールの元サン=トストラムワーヌ修道院
Ancienne abbatiale Saint-Austremoine, Issoire
イソワールの元サン=トストラムワーヌ修道院
は、11世紀末~12世紀初頭にかけて建てられたベネディクト会(カトリックで最古の修道会)の元修道院。フランス中央高地のオーヴェルニュ地方にある5つのロマネスク教会の一つだが、1857~60年にかけて画家アナトール・ドーヴェルニュ(Anatole Dauvergne)が行った修復で、内部の多色装飾が復元されたことで、唯一無二の奇観が出来上がった。しかし、これはあくまで後世の推測による修復であって、オリジナルではない。この修道院が高く評価されているのは、その外観にある。内部と違って地味だが、よく見れば、極めて繊細で、細部にまで拘った装飾が随所に見られる。教会全体は、この地方で採れる淡い黄色の砂岩で作られているが、ここでは、それに白い石、灰色の石、黒い石などを混ぜて、壁面、窓の上のアーチの迫(せり)石、屋根の瓦の下の「軒蛇腹」を飾る “細かな碁盤の目状の突起” や、それを支えるモディリオン(軒を支える彫刻)、壁を外部から支える柱の柱頭の植物模様の彫刻、内陣の外部正面の切妻屋根の下のペディメント(三角形)の飾りが作られ、内陣の外壁には黄道十二宮の彫刻が独特の雰囲気を醸し出す。ゴシック様式は、中世のステンドグラスさえ残っていれば素晴らしいが、どちらかと言えばワンパターン。ロマネスクの独特の個性には別の魅力がある。イソワールは、その上品な典型だ(特に外観は)。1枚目の写真は、内陣側から撮った全景。教会の中核(写真の右下、身廊中央からの軸線上にある外側に見える三角の小さな屋根が、先ほど言及したペディメントだ。ただ、このくらい離れていると、細かな模様までは見えない。2枚目の写真は、そのペディメントの拡大。黄道十二宮の中央の2つ、乙女座(ラテン語でVIRGO)と天秤座(LIBRA)のメダリオン(壁飾り)が窓上部の左右に付いている。こうして拡大して見ると、品の良い、細かな装飾がよく分かる。3枚目の写真は、このすぐ右側にある礼拝堂の外壁。窓の上には蠍座のメダリオンが付いていて、こちらの方は、上で述べた各種の装飾が随所に見られる。
4枚目の写真は、教会内部に何ヶ所もある部屋を仕切るアーチ。後世のものだが、細かな柄が美しい。そして、5枚目が問題の内陣の8本の柱のうちの3本(植物文様の付いた柱。一番手前の “橙の赤の縦線の入った柱” 身廊を支える柱)。3本の柱頭には、何人もの聖人が立ち並ぶ彫刻が施してある。そのうちの1本、聖人ではない変わった柄の柱頭彫刻を拡大したのが6枚目の写真。彫刻の内容は、「磔にされて死んだキリストの墓を守る天使たち」。
ここで、話題を変えて、ロマネスクの柱頭彫刻で最も不気味なものを紹介しておこう。かつて、私がソーミュール城を出た後、予定外だが、途中のクノー(Cunault)の村にミシュランのグリーン・ガイドで2つ星の教会(Église Notre-Dame)があったので寄ってみることにした。小さな駐車場に車を停め、隣に停めたばかりの車から降りた神父さんが、教会のファサードの扉を見てにっこりうなずいたので、私はさっそく中に入ってみた。そして、あちこち歩いて廻るうちにグロテスクな彫刻を見つけて驚くが、カメラを持ってくるのを忘れてしまったことに気付いた。取りに戻る時間がなかったので、悔しい思いをして去るしかなかった。その時の柱頭彫刻(柱をくわえる怪物)を、ネットで見つけたので、下に紹介しておく。ロマネスクとは、究極の奇観だと知ってもらいたくて。